第9部 技能者養成所(4)

2008年02月06日 14:27

 続・鉄道車両工学の記憶から

 [ゲージ選定に関する諸説] レール幅の軌間(ゲージ)は、レールを敷設した後から変更することは非常に難しい。鉄道創業時のゲージの選定は、極めて重要な問題だった。
  わが国の鉄道が創業時に1067?(3㌳6㌅)の狭軌を選定したのは大変な失敗だった、とする見方がある。
 わたしたちの講師も、この失敗説をとっていた。
 狭軌に比べてゲージ幅の広い広軌だと、車両重心の位置が下げられるため安定がよくなり、高速で強力なSLと大型車両が開発できるから、輸送力は格段に増強できるからだ。
 ところで、わが国の鉄道のゲージ選定の経緯には諸説ある。
 もっとも有力な説は、鉄道を建設するとき、当時の鉄道先進国イギリスから派遣された鉄道技師が、「日本は山が多くて地形が複雑なので、トンネルや橋をたくさんつくらねばならない」という理由で、建設費が安くすむ「狭軌」を採用することを提案した。
  当時の関係者はゲージの選定がいかに重要かという認識がなかく、大蔵大補大隈重信がこれを妥当な案と判断し、決められた。
 ほかにも雑説として、イギリスが日本を後進国と見下し、イギリスの植民地(南アフリカやニュージーランド)の多くで使われていた3㌳6㌅(1067?)の狭軌のゲージを押し付けた。
 狭軌にしたのは、植民地用の機関車を日本に売りつけるためで、わが国で最初に輸入された10両の蒸気機関車はすべてイギリス製である等々。
 とはいえ、狭軌ではトンネルや橋などの構造物を小さくでき、建設費が安くすむ。
 当時の後進国日本の実績や山地の多い地理的条件と、建設費が相当(約30%)軽減できる狭軌の採用が妥当であった、とする肯定的な意見も多い。

  [戦前の弾丸列車構想が新幹線の実現へ] 1937(昭和12)年の日中戦争の勃発後、大陸との交通が激増し、東京―下関間を9時間で結ぶ広軌の別線を建設して、弾丸のような高速度の列車を走らせる計画があった。
 線路ルートの選定が終わると、さっそく用地買収を進め、1941(昭和16)年から長い工期を要する長大トンネルから工事が開始される。
 だが、この年、太平洋戦争に突入し、やがて戦局の悪化のため1943(同18)年に工事を中止せざるを得なくなった。
 講師からこの話を聞いた当時は、10数年後にこれが東海道新幹線の実現につながるとは、とても想像できなかった。
 講師もそうではなかったかと思う。
 1964(同39)年に開業した東海道新幹線は、弾丸鉄道に比べてルートは名古屋―京都間(弾丸鉄道は鈴鹿山脈を抜けて直結)を除いてほぼ同じ。
この時の買収済み用地は、そのまま新幹線に転用されているという。

 [車輪と車軸が固定している列車が、なぜカーブを曲がれるのか?] この問題は、工場実習の休憩時間に、指導員がわれわれ実習生に投げかけたクイズである。
自動車ならばカーブを円滑に走るため、後輪の左右の回転数が自動的に変わることができる。
  ところが、鉄道車両は車軸と車輪は固定されている。
曲線では、レールは内側よりも外側の半径が大きいから、それだけ外側の距離が長くなる。
 車軸と一体化した両輪は同回転するわけだから、外側の車輪は内側の車輪についてゆけない。それなのに、列車はなぜカーブが曲がれるのか?
その仕組みは、走る列車の遠心力と、タイヤの踏面(とうめん)の勾配との関係にあった。
 列車はカーブを走るとき、遠心力により外側に振られる。
 すると、外側のレールを径の大きいタイヤの内側で、内側のレールを径の小さいタイヤの外側で回転する。
  これで列車はカーブを無理なく走ることができるわけだ。
 

直線ではいつもレールの中間に移り、どこでも安定した状態で走るように工夫されている。
 また、列車が曲線路を通過するとき、遠心力によって外側に倒れようとする力が作用する。これを防ぐために、あらかじめ曲線路の外側のレールを内側より高く敷設してある。
 これをカントというが、あまり高くすると曲線路上で列車速度が遅い場合や途中で停車したとき、逆に内側に倒れる力が働いて危険を伴うので、カントの最大値は規制されている(下図)。


  
 [タイヤの取替えと焼きばめ] 車輪の踏面(とうめん)を形成しているタイヤは、長く走行しているうちに磨耗する。
自動車などと同じで、鉄道車両も車輪から磨耗したタイヤだけをはずして取り替える。
 タイヤの交換では、タイヤの内径を輪心(リム)の外径よりも1000分の1だけ小さく削る。
 タイヤを熱して(約300℃)膨張させ、輪心に焼き嵌(ば)め(槌打ちして嵌め込む)し、冷却収縮によって圧着している。

【参考・引用文献】前回同。



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